2000/07/12

世界一の一枚岩?

以前、エアーズ・ロックについてのガイドブックなどでは、これが『世界一の一枚岩』であるとの表現がされていたことがあった。今では、こうした表現はあまり見かけなくなったが、エアーズ・ロックが世界一であるという誤解は、未だにここを訪れる観光客の多くに残っており、確かに何もないだだっ広い大平原の中に忽然と現れるその姿を見たとき、『世界一の一枚岩』を見たかのような感動にとらわれるのも事実である。

しかし最近では、『世界一の一枚岩』は、同じオーストラリアにあるマウント・オーガスタスだと言われている。
今回の我々の旅では訪れることはなかったが、この『一枚岩』についてもちょっと紹介しておきたい。


マウント・オーガスタス Mount Augustus。アボリジニのワジャリ Wadjari 族の人々にバリングラ Burringurrah として知られている山は、(西オーストラリア州)パースから850km、the Great Northern highway と North West Coastal highway の途中にある。世界中で最も素晴らしい独立した弧峰の一つであり、アカシア類 wattles 、桂類 cassias 、eremophilas などの潅木の生えた、石がごろごろした赤い砂の平原に、858mの高さで聳えていて、海抜は1105mある。
1858年6月3日、ヨーロッパ人として初めてこの山に登ったフランシス・グレゴリー Francis Gregory が、彼の兄オーガスタス卿 Sir Augustus Charles Gregory の名前にちなんで名付けたものである。

岩そのものは、長さ約8km、底面積が4795ヘクタールあり、(体積では?)エアーズ・ロックの約2.5倍のサイズで、そういう意味では、世界で最も大きな「岩」である。
マウント・オーガスタスの岩は、約10億年以上前の原生代初期に古代の海底に砂や玉石が堆積して生まれた。これらの堆積物は砂岩や礫岩の地層を造り、地殻の変動で収縮され隆起した。この砂岩と礫岩は、35km西南西にあるマウント・フィリップ Mount Phillip を含む広い地域を覆っている。マウント・オーガスタスの下にある花崗岩は、16億5千万年前のものであって、サイズでエアーズ・ロックの2.5倍というだけでなく、古さでもそれを凌いでいるということができる。

ところで、『世界一』大きな一枚岩って何を基準にいうんだろう?

一般的には、地表に見えている「体積」で評価しているのだろうが、エアーズ・ロックもマウント・オーガスタスも、ノーザン・テリトリーに転がっているデビルズ・マーブル Devil's Marbles のように地表に「ポコッ」と浮いているわけではない。我々が見ているのはそのごく一部であって、地下にはその何倍、何十倍の岩が潜り込んでおり、ず~っと『いちまい』なのである。
(エアーズ・ロックの成り立ちについては、付録:Uluru and Kata Tjuta/A Geological History をご覧いただきたい。)
隠れている下の部分まで測れば、どちらが大きいか分からない。計測は地質学の先生にお任せするしかない。
これが、『世界一高い』とか、『世界一大きな丸石』(笑)というのであれば、その評価もしやすいのだろうが。

さてさて、そんな議論はどこか別のところでやっていただくとして、私達が訪れたエアーズ・ロック(ウルル)は、その形状と置かれた状態からして、やはり『世界最大級』の岩の一つであったことは間違いないのだ。

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